あの火災から1年がたち、一人生き残った少年は病院であった男の養子となった。
その男はとてもめんどくさがりで、ずぼらであるため、いくら少年でもこの一年で一般的な主婦と同じレベルまで達していた。
そしてそんな養父との普通の日々を生き残った少年『衛宮士郎』は楽しんでいた。
記憶がないとはいえ家族を亡くした反動かもしれないが、それでも『家族』と居られることがうれしかった。
それがもう終わってしまうというのに。
その日の夜士郎は夕食後の鍛錬を終え寝ようとしていた。
彼の養父、衛宮切嗣に救われて、1週間後、彼は自分で出来る限りの鍛錬を毎日欠かさず行っていた。
学校に入ってなかったので時間が許す限り自分の体を鍛えていた。何かしていなければ不安だった。この日常が壊れてしまわないように。そして日常を守るため。
自分の寝室へ向かう途中、切嗣が縁側で満月を見上げていた。
彼はこちらを向いてこう言った。
「士郎ちょっとこっちへ来なさい。」
そう言われて士郎は彼の横に座った。
「僕はね正義の味方でそして魔法使いだったんだよ。」
そう彼は誇らしげに言った。
「魔法使い?正義の味方?」
「ああ、魔法使いは童話に出てくるように科学とは違う方法で不思議なことをすること。でももう使えないんだ。
そして正義の味方は人助けをすること
でも正義の味方は期間限定でしかも9を救う代わりに1を切り捨てなきゃならない。でも僕は最後に自分のわがままで1を救ったからもう正義の味方ではないんだ。」
「父さんは後悔してないのか?」
「後悔は、、、してないよ。その人からすれば裏切ったように思えたかもしれないけど、その人が生きていてくれさえすれば僕は良いんだ。」
「それで良いんじゃないか?父さんが納得してるなら。それで父さんにとって大切な人を守れたなら。」
俺がそう言うとおやじは俺の頭を抱いた。
「そう言ってくれると安心するよ。士郎ありがとう。この、、、1年、、、間、、、楽し、、、かったよ」
そして俺はおやじが言ったことよりも、抱かれているおやじの胸から聞こえてくるおやじの心臓の音が小さくなっていくのが気になっていた。
「父さん、、、?」
胸の中から見上げた彼の目にすでに光はなかった。
「父さんっ!!」
そうして父さんは死んだ。
元々知り合いの少なかった父さんに訪れる人は少なく葬式は父さんの知り合いである藤村の雷画のおじいちゃんがしてくれた。
父さんの火葬がすんでおじいちゃんが手紙をくれた。
どうやら父さんが身につけていた物らしい。
そこにはこう書かれていた。
『しろうもし君が自分にとって僕以外に大切な物を見つけ、それを守りたい力がほしいなら、僕の部屋のどこかにそれを手に入れるための手助けをする物があるから探してみるといい。
これが僕が君に出来る最後の罪滅ぼしだ。』
俺はすぐ父さんの部屋に向かった。
元々あまり物必要としなかったためか、部屋には机と箪笥しかなかった。
父さんが言っていたと思われる物は押入の隅にあった箱だった。
中に入っていたのは日記と父さんと女の人が写った写真と橙(オレンジ)と青の封筒と一枚の紙があった。
その紙には二人の女性の名前と電話番号が書いてあった。
『蒼崎橙子』
『蒼崎青子』と。
冬木市。
1年前聖杯戦争により大火災が起こり多くの人間が死に、人々はそれを忘れているかのようにその日を過ごしていた。
しかしこの日、聖杯戦争以上に危険な人間である二人の姉妹が冬木市を訪れていたことを人々は知らない。
その二人は坂の上の武家屋敷の門の前で久しぶりに再会した。
姉のほうは眼鏡をかけ、髪は短く、色は水色である。
妹は姉とは対照的に腰よりも髪は長く色は赤い。
どちらも何も言わない、しかしきっかけさえあれば今すぐ殺し合いを繰り広げそうな雰囲気であった。
しかし
「ふんっ」
姉のほうはすぐに何事もなかったかのように門をくぐり抜けていく。
これには妹のほうも拍子抜けしてしまいあわてて姉に問いかける。
「ちょっと、姉貴無視しないでよ!」
「ふんっ、今日は貴様に会うためにここに来たわけではない。」
「やっぱり姉貴も私と同じ用件の様ね。」
「どうやら貴様も数日前に切嗣さんの子供とやらからの電話を受け取ったようだな。」
「ええ、まさか切嗣さんに子供が居るなんておどろいわたわ。」
「まぁ、私もその真偽を確かめにここへ来たわけだが、貴様が居るとは思わなかったぞ。」
「ええ、私もよ」
そう言いながらも二人そろって玄関に入っていく。
「失礼する。」
「ごめんくださ〜い。」
二人がそう言うと奥から出てきたのは、目に包帯を巻き、赤銅を少しうすくしたような色の髪を持つ少女とも少年ともつかない子供が出てきた。
まず仏壇に案内されそのとき私たちは初めて切嗣さんが死んだことを知った。
残念だ、あの人以上の人物はそうはいないというのにもう会えないとは。
その間例の子供はずっと黙って、切嗣さんの仏壇を方を包帯をしたまま向いていた。
居間に通され、その子供は『衛宮士郎』と名乗った。どうやら男の子らしい。
「それで?切嗣さんのこととは別に私たち個人にも用があるのだろ。」
私は衛宮少年がお茶を出した後すぐそう聞いた。
「でなきゃ『あなたも魔法使いですか?』なんて電話越しには聞かないでしょうね。」
青子がそう言う。
「まずはこれを。」
そう言って衛宮少年は橙を私に、青を青子に向けて差し出した。
「父さんの遺言通りに、部屋探して出てきた物です。おそらくあなた達に渡すのではないかと。」
衛宮少年はそう言った。
その封筒には切嗣さんの字でこう書いてあった。
『橙子ちゃん、久しぶりだね。このようなかたちで君たちに頼み事してすまない。ただ僕ではこの事に対応できない。だから君たちに頼むことにした。
君たちに出来れば士郎の面倒を見てもらいたい。もちろん魔法に関してだ。これは何も冗談ではない。もしかしたら『魔導元帥』でさえもその子に関してはお手上げかもしれない。
ただの魔術師ではその子は永久に実験材料としか見ないだろう。だから君たちに頼ることにした。もし迷惑であれば気にしなくてもいい。
そのときはその子の僕と君たちに関わる記憶を消してほしいその子にとってはそちらの方が幸せかもしれないが。』
おそらく青子も同じ内容だろう。
切嗣さんあなたの頼みを私たちが断るとでも。
ただ衛宮少年に関しては気になることがあるので聞くことにした。
「さて自己紹介が遅れたな、私は蒼崎橙子、こっちは妹の青子だ。ところで何故橙(オレンジ)の封筒を私、青の封筒をこいつに渡した。
確かに私たちの名前を考えれば分かるが、名乗り出てはいないし、切嗣さんに写真を撮らせた覚えもないのだが、こいつに関しては知らんが。それに何故包帯をしていて私たちが分かる。」
そうこの少年はわたしたにあってから一度も包帯をはずしていない。
「別に包帯をして、見えていなくてもあなた達がどういう姿をしているのかは分かります。この1年間この姿で暮らしてきたので。何となくですがね。俺にとって姿さえ分かれば名前は分かります。
何故初対面のあなたたちのことが分かったかと言えば、『見たことがある』からです。」
衛宮少年はそう言った。
「先ほども言ったように、私たちも他人に写真をむやみに撮らせるほど甘くはないし、君を見たこともない。ならばいつ見たんだというんだ?」
私はこう返した。
「ええ確かに。あなた達にあったことはありませんが僕は知っています。正確に言えば今地球上にいる人間の真名、いえ生物の名前を言いましょうか?」
何?
「ちょっとどういう事?いくら切嗣さんの子供だからってふざけてること言ってるとぶっ飛ばすわよ!」
青子がそう言う。
「俺自身今どういう状態なのか分かりますが、あれがどういう物なのかいまいち分からないので僕にあったことをお話ししましょう。」
そう言って衛宮少年は話し始めた。
この時少なからず予感はあった。
『あの』切嗣さんが『魔導元帥』でさえ手に負えないと言う、少年の話を聞くことがどれだけ私たちの常識を破壊するのかを。
衛宮少年は自身が体験したことを詳細に話してくれた。
自分が一度死に、もう人間ではないこと。
『神様』とやらに逢い、生きる代わりに体験した地獄を。
そして地獄を耐えた後もらった剣のことを。
話が終わって、5分後。
「くっくっくっくっく、、、、」
「ふふふふふふ、、、、」
直後、
「「あっははははははははは!!」」
私たち二人は同時に笑い出した。
確かにこれは『魔導元帥』でさえ手に余るだろう。
切嗣さん、あなたを恨みますよ。
その間衛宮少年はずっと黙って私たち二人の反応を待っていた。
「まさか、生きた『魔法』に出会えるとはな。これは傑作だ。」
そうこの少年は生きた『魔法』だ。
「まぁそれが本当の話ならな。」
「そうねまぁいくらなんでもここまで壮大な嘘はないでしょう。でも、そうねぇ証拠としてさっき話してた剣を見せてもらいましょうか。」
青子がそう言うと、
「わかりました。」
衛宮少年は右手を前に出す。
次の瞬間手の中には柄には言葉では説明できない色の目玉が2つ、しかもどちらも色が違う、あり、今まで見てきたどんな物よりも黒い、闇を具現化したような色のナイフの大きさをした片刃の剣があった。
そしてほんの少し動かしただけで部屋の中の空気が「切断」され、部屋の中で突風が発生した。
衛宮少年はすぐ剣を消し突風も収まった。
「今のは『どんな物でも切断したい』と思ったので、たぶん空気が切れたのでしょう。」
つまりあの剣が動いた分空気が『切断』され、その隙間に空気が入り込もうとして突風が起こったのだ。
「そんなことをされたらどんなバケモノでもひとたまりもないな。」
「ですがあの方が言っていたように『何も切りたくない』と思えば絶対に切れません。大きさも自由ですし。」
「まぁ、これで君の言っていたことが本当だと分かったわけだが。これで満足か?」
そう言って私は青子に問いかける。
「十分よ。切嗣さんが言ったことがどういうことだか身をもって体験したしね。」
青子はそう言いながらもまだ動揺しているのだろう。私だってそうだ。
「さて、それで君はどうしたい。切嗣さんからの手紙には君の面倒を見るように書いてあったが。」
そう言うと衛宮少年は一歩下がって頭を下げ、こういった。
「俺に『魔法』を教えてください。」
「魔術ではないのか?」
「どちらも一緒でしょう。それに父さんは自分のことを『魔法使い』だと言いましたが。」
切嗣さんあなたも人が悪い。
「では君は『魔法』を習って何をしたい?切嗣さんのように『正義の味方』になるのか?」
「いえ、俺は『家族』を守りたいんです。」
「君の家族はもういないのでは?」
「それは社会の中での『家族』という意味で聞いていますか?ならば違います。俺にの『家族』は俺にとって大切な人たちのことです。血のつながりとかそういううものではないんです。
第一俺自身父さんの義理の息子です。それでも父さんは『家族』でした。」
「つまり君は『仙人』になりたいのか?卓越とした力と知識を持ちながら何もせずただ静かに家族と共に過ごすのみ。そんなあり方を望むのか。」
「あなた風に言えばそうなるのでは?」
「なるほどよく分かったは。切嗣さんたっての頼みだもの断るわけにはいかないは」
青子がそう言う。
「良いだろう君の頼みを了承しよう。」
私としてもこの少年の体には興味がある。
「それではよろしくお願いします、『橙子姉さん』『青子姉さん』。」
その瞬間、部屋温度が一気に下がった気がした。もちろん本当に下がったわけではなく、原因は隣で殺気をまき散らしている青子だ。
「落ち着け。先に言わなかったおまえが悪い。それともおまえはわずか8歳の子供をそれだけの理由で消し炭にするつもりか?」
「あの何か変なこと言いましたか?」
「いやなに、こいつは名前で呼ばれるのが嫌いなだけだが、気にしなくていい。事前に言わなかったこいつが悪い。」
「ああもう、良いわよ。勝手にすれば。」
そう言って、青子はそっぽを向いた。
「それとこれから君のことは士郎と呼ぶのでよろしくな。」
とりあえず説明に関しては一段落ついたので気になることを聞いてみた。
「士郎、ところでいい加減、素顔を見してもらおうか?」
「そうね私も気になるは。」
青子も気になるのかこちらの話題に乗るってくる。
しかし私がそう言うと、衛宮少年は急に顔を青くした。
「どうした何か問題でもあるのか?ああ、事故の傷があるというのなら気にするな。そんな物私たちは見慣れている。」
「いえ、見せることに問題はありませんが絶対事情を説明してもあなた達は気を悪くするでしょう。」
「どういう事?」
「先ほど話した中で俺がどういう目にあったか話ましたね。
そのせいか、鏡に映った自分や写真は大丈夫なんですが、他の人を見ると吐き気をもよおしてしまうのでこの包帯をしているんです。
いくらなんでも自分の顔を見て吐き気をもよおされたらいやでしょう?」
「確かに。」
「まぁ、でもそんなことはいいから早く見せなさい。」
青子がそうせかすと、
「分かりました。」
衛宮少年が包帯がはずしていく。
その両目は「紅」かった。そう「赤」ではなく「紅」だった。
それも吸い込まれそうな瞳で、少年でありながら選任のような年老いたような目で、光はなく無機質であった。
ずっと見ていても飽きないだろう。
しかしその両目が私たちをとらえわずか1秒と経たないうちに、少年は包帯をつかんですぐ今から飛び出していった。
今から出て廊下に向かうとドアが開いていた。
のぞくと士郎が嘔吐していた。
「大丈夫か?」
そう聞くが、未だに吐き続けて答える余裕はなさそうだった。
「姉貴戻りましょう。私たちに出来ることはなさそうだし。」
「そうだな。」
そう言って居間に私たちは戻った。
5分後。
包帯をして、居間に戻ると二人は先ほど同じ場所に座っていた。
俺顔を見て、橙子姉さんが聞いてきた。
「大丈夫か?」
「何とか。」
「ふむ、まぁでも私たちの顔見るたびにトイレに駆け込まれてもいくらなんでもむかつくのでそれは克服してもらうぞ。顔を青くするのはいいがせめてトイレに駆け込むのはどうにかしないとな。」
「そうね、そういうわけで我慢しなさい。」
そう言うと青子姉さんは僕の包帯をほどいた。
ふたたび込み上げてくる吐き気。
今度は吐く物も残ってないが、胃液が込み上げてくる。
しかしそれを何とか我慢する。
「その調子だ。」
橙子姉さんが笑いながらそう言う。
「ところでお二人はここに滞在するんですよね?」
士郎がそう聞いてくる。
「ああ、おまえを鍛えるためどうするかはまだ決めていないがここで出来ることで、まず基礎からゆっくりやっていく。」
「そうね、それがいいわね。」
橙子姉さんの言葉に青子姉さんが同意する。
「それではお爺ちゃんにお二人が滞在することを電話で伝えておきましょう。」
「「お爺ちゃん?」」
「父さんの知り合いで、このあたりの大地主です。僕事をよく心配してくれているので。」
そう言って士郎は電話をかけに出ていった。
「で、どうするの?」
「イレギュラーが起こらなければ先ほど言ったとおりだ。」
「まぁ、切嗣さんが言っていたようにいざとなれば老師を頼ればいいか。」
「『魔導元帥』か?」
「ええこれでも個人的な知り合いなの連絡も取れるし。」
「そうか。」
「さて士郎服を脱げ。」
居間に戻った士郎にそう言う。
「はい?」
突然のことに士郎が疑問符を頭に浮かべる。
「私は『人形師』だ。当然人体の構造にも精通している。おまえの身体に異常がないか調べるために服を脱げと言った。」
「分かりました。」
そう言って士郎は上半身裸になる。
「悪いが、調べている間おまえには苦痛しか感じない。だから眠ってもらう。」
「えいっ!」
私がそう言うと青子が士郎を気絶させる。
「どうするおまえも見るか?士郎の深層心理ものぞくつもりだが。」
「ええ、身体の異常は意味わかんないけど、心の方は気になるし。」
「そうか」
先ほど身体の異常を調べると言ったが、『生きた魔法』の精神がどうなっているのか気になった。
深層心理をのぞいてわずか5秒で二人はあきらめた。
なぜならとてもではないが大人の自分達でさえ耐えられないような内容だったから。
士郎の深層心理にあったもの、それは『欲』と『死』だった。
士郎の心をのぞいただけで二人は自分が死んだように感じられた。
二人とも荒い息をし、額には脂汗が大量に浮かんでいた。
「どうする姉貴?体の方ものぞいておく?」
「ああ、だが今度は私一人だ。」
「そうねなんかあれば私が殴り飛ばすから安心して。」
「そいつは頼もしいなぁ。」
そう言って今度は体の方をのぞいた。
こちらはさすがに大きな問題は無かったがしかし分からないものが二つあった。
一つは「鞘」のような物で、もう一つは「何かのかけら」だった。
鞘の方はおそらく切嗣さんが何かしたのだろう。問題はかけらの方にあった。
こちらは先ほどの士郎の心ほどではないが、人間を狂わせるには十分な代物だった。
「どうだった?」
意識を元に戻すと青子が聞いてきた。
「ふむ、問題はあったがそれについては士郎にも聞きたいことがあるからたたき起こせ。」
「OK!」
そう言って青子が士郎の頭殴って文字通り叩き起こした。
「あぅぅ、それで何が分かったんですか?」
「おまえにも言っても分からないから説明はしない。ところで士郎、切嗣さんが残した書物などはないか?」
「父さんの日記であれば。」
そう言うと日記を取りに士郎は席を立ち、戻ってくると手には表紙が革で出来た日記帳を持ってきた。
そこには切嗣さんが聖杯戦争でどのようなことをしたのか事細かく書いてあった。
中には切嗣さんオリジナルの魔術についても書いてあり興味深かったが後にすることにした。
必要な事柄は日記の終わりの方に書いてあり、そこには聖杯が汚れていること、そして自分がそれによってもう永くないことが書かれていた。
そのとき私はあのかけらがなんなのか分かった。
「おい。」
「何よ?」
「まだ先の話だがいつでも『魔導元帥』と連絡を取れるようにしとけ。」
「それって!」
「いいからちゃんと話すから待て。」
「あの〜何か分かりましたか?」
そう士郎が声をかけてくる。
「ああだいたいわかった。十分に役に立った。」
「そうですか。ではそろそろご飯にしましょう。」
そう言って台所に向かう士郎。
「おいおまえが作るのか?」
「ええ、父さんは家事が全く出来なかったので。最初はこれのおかげで大変でしたがね。」
そう言って包帯を指さす。
「手伝おうかしら?」
青子がそう言う。
「いえだいじょうぶです。」
結論から言えば士郎の料理はわずか8歳でありながら絶品でたった1年間でここまで腕を上げられるのかと不思議に思うほどだった。
午後は士郎の切嗣さんの話で終わった。
夕食は夕食で昼食の時と変わらず絶品だった。
士郎が風呂に入って寝静まった後私は士郎の体に埋まってる物について青子に話した。
「聖杯のかけらが!?」
「ああしかも日記によれば聖杯は汚れている。だからあんな大惨事になったのだろう。問題はそれが士郎の体と同化したために取り出せないことだ。」
「だから老師に?」
「ああ聖杯を作った一人として何か分かるかもしれんしな。」
「それで鞘の方は?」
「そちらはおそらく英霊の触媒に使った法具だろそちらはそちらで規格外の代物だがな。」
「まったく、切嗣さんもすごい置きみやげを残していったわね。」
「まったくだ。」
こうして私たちと士郎との出会いの1日は終わった。
あとがき
どうもNSZ THRです。
基本的に橙子の一人称ばっかですいません。次回は士郎の日常と魔術の修行に突入します。
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